スレイヤー 7日目の煉獄

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10日間でスクリプトを書き上げ、スティーブ・ラングの出演シーンはわずか3日で仕上げ、その上、24日で全部の撮影を終えた『スレイヤー 7日目の煉獄』って、オトボケ早打ちマックみたいに．．．　しかも映画の原題が『The Seventh Day』ってあのね⁉

この映画を簡単に例えるなら？　　．．．初めて彼にオスカー主演男優賞をもたらした『トレーニング デイ(2001)』であり、狂人的演技指導者による超ド級カルト映画『エクソシスト(1973)』に加えて、限りなく実録ものに近い2005年の映画『エミリー・ローズ』の三つの映画を混ぜてからガラガラポンと不完全のまま飛び出したおかげで、上手く組み合わせが出来なかったのか？　その不甲斐なさからミックス・アップ的映画なんてモノになってしまっている。

Welcome to Baltimore October 8, 1995
空飛ぶ教皇ことヨハネ・パウロ2世がアメリカに到着し、中部東海岸に位置し、星条旗と国歌誕生のアメリカで最も歴史のあるボルチモアへと．．．　アメリカ歴史の中心都市だけでなく経済の重要拠点でもあるボルチモアにあるアメリカンリーグのフランチャイズ、ＭＬＢオリオールズのボールバーク、オリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズで教皇が演説しているライブ中継がテレビに映し出され、まさにその時にイニシエーションが行われようとしていた。
年老いたルイス神父をサポートするように若きリクルートのビーター神父が、エクソシズムに臨んでいた．．．　それから26年の月日が経ち

時は現在になり．．．

“An exorcist doesn’t hide from evil. He runs TOWARD it, feels (evil)
in his bones and can sense when it’s close.”
大司教が成績優秀な新人のダニエル神父に引き合わせるために、表情と全身のオーラから一目見て、人付き合いの悪さを醸し出している、今やエクソシストとして老練・熟練者であるピーター神父に彼を紹介する場面から、この映画の物語が改めて本格的に始まる。

スティーブン・ラング演じる大司教によると、バチカンは悪魔払いに対して否定的な態度をとり、悪魔払いに必要不可欠で重要な儀式を教えるのを止めてしまっている．．．　26年前のあの教皇オッちゃんのライブ映像はシニカルな当て付けか？　だからそのせいで今では、"一握り、十数人以下" のカトリック聖職者だけが細々と密かに悪魔払いのために訓練をし、実践をしている。大司教を中心にピーター神父を含め、彼らはまだ悪魔払いを行う方法を知り得るカトリック聖職者の中で数少ない小さなグループになってしまっていた．．．　その事を前提に

How Ouija boards work. (Hint: It's not ghosts.)
No, demons will not possess you if you use one.

Despite their long history as hoax spiritualist devices turned hit
toys turned tools of the devil, 　Ouija boards won’t actually put
you in contact with demons or spirits. Any scary firsthand reports
you might hear or read of real-life Ouija board horror stories are
exaggerations, false claims, or a misunderstanding of how Ouija
boards actually work.
フラ語とドイツ語から派生した言葉より名付けられたウィジャボード．．．　少年チャーリーは、友達と遊んでいるうちに悪魔に憑依され、彼自ら家族全員を殺害している。しかし、ウィジャボードがそのようなオカルト的な事と全く関係のないのは科学的に証明され、海外の船員がもたらした "コックリさん" よろしく、人の持つ無意識に身体運動が発生する「イデオモーター効果」と呼ばれるもので、脚本も担当しているジャスティン・P・ラング監督の演出は常識を欠いているし、間違った低能な思考へと誘発もする。

判決が下される前に少年院にいる彼を助け、事件を解決しようとする二人の神父の活躍を描こうとしているが．．．　そんな都市伝説的な事をシナリオに組み込むようなセンスの持ち主が描いたホラー映画なんて、マヤカシとしか映ってはいない。

それでも気を取り直して、悪を感知することができる天からのギフトを授かった若い司祭であるダニエル・ガルシア神父をバディール・デルベスが演じている。　彼が授かった力は、特定の人々や場所の周りで起こった恐ろしい出来事の強い印象をいち早く、鋭く察知することが出来る "Claircognizance" ・霊知と呼ばれるものであった。
そして相方の親分、ピーター・コステロ神父は、若い頃に対峙した悪魔とのトラウマから、それ以降、シニカルな偶像破壊者になり、また26年の時を経てゾンザイな話し方をする最高峰のエクソシストになっていた。その少々細めのタフ・ガイ神父をガイ・ピアースが演じている。
ただし、この二人のコンビでは、致し方なく映画がただ乾いた暗さだけが残り、映画の面白みには、哀しいかな惜しくも反映はされてはいない。

"悪魔の存在を初めて認めた裁判" と呼ばれた過去にドイツで実際に起こった 出来事を基に描かれた『エミリー・ローズ』 の存在によってエクソシスト映画の復活を刺激したようにおぞましい何かの憑依を証明する場合、それは悪魔憑きの暗喩となり、つまり若き犠牲者がベッドに顔や手足を縛られているだけで、すなわち悪魔が憑依していると表現するところにある。

『エクソシスト』で見せたデミアン・カラス神父の顔色が灰青色でまだらで痛みがあったように冒涜的な悪魔の声におびえ、十字架を振り回し、"Cast thee out!" と吐き出す神父たちをしり目に典礼の呪文を必死に唱えても、どっちみち誰も変えることもできず、誰も決して悪魔のイタズラを止めることは出来ない、何も変わらない。　いわゆる呪文自体が、黄金のバックナンバーであるただ聞き流すだけのオールディーズ調にもなっている。
しかしながら、結局のところ、これらの映画が"エクソシスト"の元々あった姿の復活への証であり、また兆しとなっている。

Remember the sabbath day, to keep it holy
「安息日を覚えて，これを聖とせよ」．．．　モーセの十戒より
"Seventh day" の意味するところは？
聖書の冒頭には、神が６日間で世界と動植物と人間を創造した様子が描かれている。そして何故？1週間が7日なのか？
神は６日間にわたる自らの成果に非常に満足し、７日目に天地創造の完成を宣言した。そして、この日を祝福し聖なる日とし、その後、十戒により安息日と呼ばれるようになった．．．　人間たちは安息なんてしていられない！　covid-19が荒れ狂う世の中では．．．　でもだからといって、ユダヤ教の敬虔な信者は、安息日の土曜には労働とみなされることは一切、今でもしない。極端な話、土曜日には誰も電気のスイッチを入れようともしないとされる。その事は、金曜の夜に土曜日の食事を全て作ってしまう彼らのユダヤ教への "帰依" からうかがい知れる。何故なら、冷蔵庫を開ける行為も労働とみなされ禁忌とされている為に．．．　クリスチャンはその点はユルユル、なんちゃって？

その七日目に奴らは襲い掛かる！

『L.A.コンフィデンシャル(1997)』ではエンタメの中心都市ハリウッドに進出し、監督が有名になったのと同じく自身も世に知られるようになった『メメント(2000)』．．．　そんな彼、ガイ・ピアースが、製作総指揮に名を連ね"人の生まれ変わり： リインカネーションを信じている"とComingSoon.netのインタビューに対して述べ、その後、彼は映画についての意気込みを語っていた。
“I didn’t set out to make a horror film,” he said. “I didn’t set out to
make a film that was scary, per se. I just want to find films where
the characters feel that they’re real; and their journey is justified,
and 　that they’re on some sort of path. 　And even if they don’t
know what that path is, that we as an audience understand what
that trajectory looks like.”

悪魔に憑依された少年を大袈裟に描くのは映画の性質上、エンタメとして成立するかもしれない。突然、ダニエル神父の能力が発揮されても最初は戸惑いがあり意味が分かりにくいが、面白い演出の一つかもしれない．．．　しかし、だけれども
肝心かなめのラストを意味不明なシーケンスにするのは、お門違いにも見えてしまう。
何故かって？　半世紀近く前の映画なのに今でも色あせない『エクソシスト』がカルト映画の中心的存在に今でも位置しているのは何故か？　少女の首が360度回転するエンタティメント性の高さが取り上げられ、注目するのも分かるが．．．　クリスチャンなら禁忌で大罪の一つとされる、自ら命を絶つ行為．．．　最後、デミアン・カラス神父が
"Come into me！ Goddamn you take me! Take me！"　と叫び、リーガンの顔を殴打し、自分自身に悪霊を憑依させ、外階段下に身を投じる．．．　母親のことで嘆き悲しむことが出来ない哀れな神父なのにその彼を地獄に追いやるフリードキン監督の至上最強の異常性が成せる業だけなのか？
さすが10日で脚本をかき上げただけのことはある？　アイロニカル過ぎて失礼

ズッコケそうになった場面．．．　エクソシスト映画ではあってはならない鉄則をこの映画は破っている。それは、エクソシスム（ラテン語: exorcismus. ギリシア語: ἐξορκισμός ）とは、ギリシア語で「厳命によって追い出すこと」を意味し、そのため、悪魔払いや悪霊退治には必ずラテン語が使われるという一丁目一番地を無視して、いきなり英語って何ですか？　『死霊館』のウォーレン夫妻に弟子入りしなさい　(`A´)

一言
この映画のポスターでは、もう一人の重要なキャラがいない。　恥ずかしい話し、その人、トレードマークのヒゲを剃っていたので改めてキャスト・リストを見るまで誰だか全然、分からなかった。　たぶん初めてかも、彼のそんな姿を見るのは？　言い訳過ぎて　　失礼