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つみきのいえ Comments (11)
人生、家族の変化、暮らしが詰まったいえ。温暖化で海面が家に迫っては、家に石を積んで階上に新しい家を作り、住み替えて生活を積み上げてきたおじいさん。家の下には過去の家が積み上がって海の中。
そこに潜ってどんどん下に潜っていくと、家を遡るとともに過去も遡って蘇り思い出が溢れて来る。
1人が夫婦になり、夫婦が家族になり、娘が結婚してまた夫婦に戻り、一緒に過ごしてきた妻を看取ってまた1人のおじいさん。積んである家の大きさが、家族の頃は大きいけれど、新しく家を積むと元より小さい面積になるから、どんどん小さくなっているのがおじいさんの人生と重なる。
寂しそうに見えるけれど、最後に注いだワインはおばあさんの分と2人分。この人生一緒に色々あったねって事なのかな。若き日のおじいさんとおばあさんで一緒に積んだ事もあった家の上に、今のおじいさんの暮らしは成り立っている。
海面上昇のために、昔おばあさんと走り回った野原はもう深い海の底で、家の周りは全部海。人との交流にも船が必要。そういう世界にして良いものか、考えさせられる。一方、海面上昇の設定があるから、おじいさんの人生の変化が縦に詰まれてわかりやすい。
終始色鉛筆のタッチがおだやかな懐かしさと寂しさを表現していて、俯瞰で描かれた街の風景は海バージョンのスノーマンや、魔女の宅急便を彷彿とさせる。
今から未来へと目を向けるために、それも必要な事である場合もあるかもしれない。
ただ未来へと目を向け今を作り上げる事に行き詰まったなら、過去を振り返るべきなのかもしれない。
その過去を積み上げてきたのは紛れもなく自身なのであり、振り返る事が今の自分と向き合い、今を生きる事につながるだろうから。
もっと他の作品が見て見たい。
そしてもう少し長い作品も見たいな^^;
この映画は何も語らない。長澤まさみのナレーションもあるらしいが、個人的には無い方をお勧めしたい。ビュワーの想像力に委ねられている作品であり、見る人に統一された感想を持たせない多義性のある素晴らしい映画であると思う。
ストーリーとしては、そこまで難解で複雑なものではないのだが、そこに先ずは「デザイン」としての断片を感取でき、好感度がある。音楽は栗コーダーカルテットの近藤研二を採用しているが、これ以上ないピッタリの音楽を映像にマッチさせてくれているし、1つ1つの環境音やそのタイミング、編集にも脱帽。絵的な観点からしても、場面ごとに黄色と青色の美しい色調を綺麗にまとめあげていて、効果的な演出へと繋げている。
「アート」でありつつも、「デザイン」を置いてけぼりにしていない、誰が見ても感想を言える多義性に富んだ素晴らしい作品だと思っています。