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原子怪獣現わる Comments (4)
北極でアメリカ軍が水爆実験を行ったところ、冷凍状態だった恐竜が目覚め、ニューヨーク目指し南下してくる。
設定はゴジラとよく似ているが、こちらは単なる恐竜。
DVDで鑑賞。
「ゴジラ」シリーズ第1作(以下、「ゴジラ」)の前年にアメリカで製作された怪獣映画。
今日まで続く怪獣映画の基本フォーマットを確立した作品として、決して忘れてはならない名作であります。
というのも、本作にて史上初となる“原水爆実験の影響を受けた怪獣”が登場したからです。後年の特撮怪獣映画に多大な影響を与えました。
そして、知る人ぞ知る「ゴジラ」の元ネタになった作品でもあります。本作が無ければ世界に誇る“怪獣王”は誕生していなかったのだと思うと、非常に感慨深いものがありますなぁ…。日本では「ゴジラ」の公開後に上映されたので、本作の方が真似をしていると勘違いした人が多かったとか…。
基本的なストーリーや設定は、その殆どが「ゴジラ」と似通っています。
原水爆実験により太古の眠りより蘇った恐竜(ゴジラはジュラ紀の“海生爬虫類から陸上獣類に進化する過程の中間型の生物”の生き残りが怪獣化。本作のリドサウルスは放射性因子を帯びた肉食恐竜)、主要都市への襲撃(「ゴジラ」では東京。本作はニューヨーク)、秘密兵器による殲滅(「ゴジラ」ではオキシジェン・デストロイヤー。本作ではアイソトープ弾)…これらの要素が丸っきり踏襲されています。
しかし、「ゴジラ」には無い設定として、リドサウルスの血には多量の放射能が含まれている、というものがあります。アメリカ軍の攻撃により出血しますが、その血が放つ多量の放射能の影響で逃げ遅れた人々が瞬時にバタバタと倒れていく描写はかなりショッキングでした。
ストップモーションを使ったリドサウルスの特撮は、レイ・ハリーハウゼンの堅実かつ創意工夫に溢れた演出が光とても迫力がありました。
暗闇の中、岬の灯台を破壊するシーンが一番好きです。
「ゴジラ」との決定的な違い…それは“反核”の要素が殆ど無いことです。
原水爆実験は、あくまでもリドサウルスが出現する要因にしか過ぎません(記憶が曖昧ですが、劇中ではどこの国が行った実験かははっきりと明言されていなかったような…)。
当事国だからそんな意識が芽生えないのは当然のことなのかもしれません。「GODZILLA ゴジラ (2014)」での水爆実験の扱い方と似ている気がしました。
広島、長崎への原爆投下、“死の灰”を浴びた第五福竜丸、原子マグロ…。
戦争と水爆の記憶も生々しい日本だからこそ、同じような作品であったとしても全くタイプとテーマの異なる怪獣映画になったのだなと思いました。
独立プロの製作でワーナーが買い上げ公開したもの
日本では1954年12月に大映配給で公開された
何故大映なのか?
恐らくゴジラの大ヒットにあやかろうと急遽輸入したのだろう
同種の怪獣映画を作ろうにも大映には当時特撮のノウハウも無く直ぐには作りようもなかったからだ
大映が1949年に公開した特撮映画透明人間現わるは、実は円谷英二が戦時中に戦意高揚映画を撮ったかどで戦後GHQにより東宝から追放になり、大映で撮ったものだ
円谷英二が東宝に帰ってしまえば、大映にはスタッフの見よう見まねのノウハウしか残されてなかったのだ
大映が怪獣映画を自社で製作できるのは、1965年の大怪獣ガメラの公開まで実に10年もかかるのだ
原水爆実験で古代の巨大生物が目覚めて、都会を襲撃する
もちろんゴジラと全く同じモチーフだ
ではゴジラは本作の真似だったのだろうか?
ゴジラの公開は1954年11月3日だ
同年3月1日の第五福竜丸被曝事件が直接のゴジラの企画の出発点であるという
この時点でのゴジラの企画仮題は、「海底二万哩(マイル)から来た大怪獣」だった
ウォルトディズニーの海底二万哩は、1954年12月米国公開、日本公開は1955年12月なのだから、時系列でみて後であり内容からも一切関係ない
そして本作の原題は、The Beast from 20,000 Fathomsなのだ
つまりゴジラは本作を元ネタとしているのは確実だ
当時は海外との合作映画の製作が盛んになり始めた頃だ
恐らく田中友幸プロデューサーが輸入作品のサンプル試写を観ていたのではないだろうか?
かといってゴジラが映画のイノベーションで有ることを貶めることにはならないと思う
むしろ世界的な核兵器への恐怖の高まりが、時を同じくして日米で同様のモチーフで映画を作らせたと考えるべきだ
円谷英二がクジラの怪物が東京を襲うとい映画の企画を東宝に提出したのは1952年5月のことなのだから、本作よりも2年も前のことなのだ
本作は超有名なSF作家レイ・ブラッドベリが新聞に掲載した短編小説『霧笛』が原作とされている
しかし本当のところはプロデューサーが製作を始めた途中で、同種の話の新聞小説があることを知り原作権を買い上げたのだという
原作は灯台の鳴らす霧笛を仲間と思って怪獣が近寄ってくるのを、灯台守の大人と子供の二人が目撃するという短いお話
本作にも灯台のシーンはでてくるが破壊されてしまう
ガメラの第一作で、灯台と子供が登場するのも、本作から由来するものだろう
また、博士が潜水ポッドで深海を探り、その目で怪獣を確認するシーンは、続編というべき怪獣ゴルゴでも繰り返される
そして1971年のガメラ対深海怪獣ジグラに登場する潜水ポッドも実は本作から由来していたのだ
怪獣が何故ニューヨークを襲撃するのか?
これはもちろん総ての怪獣映画の始祖キングコングに由来している
怪獣は大都会で暴れなくてはならないのだ
本作では見せ物で連れて来られたのではなく、海流に乗って段々と北から南に移動して来るためと説明される
ニューヨーク沖で怪獣と同種の化石が発見されており、古代にその怪獣が生息していたところなのでニューヨークに向かっているのではという設定
南洋の何故ゴジラが東京に出現するのか?
ゴジラ映画では説明は何もないが、これも本作が由来だからと言える
もしかしたらゴジラも同じ理由で黒潮に乗って東京湾口までやって来るのかも知れないかも知れない
怪獣はイグアナ的な形態をしており、それが超有名な特撮マンであるレイ・ハリーハウゼンによるモデルアニメーションで動く
動きは滑らかで流石だ
特にクライマックスのコニーアイランド遊園地での最終決戦のダイナメーションによる合成は目を見張る
怪獣が初めて出現するのは南洋ではなく、北極圏の氷原での核実験場
ガメラシリーズ第一作の大怪獣ガメラで、ガメラが初登場するのも北極での核爆発が発端になっている
これは本作のこの出現シーンに由来していたのかも知れない
さらに、ゴジラの逆襲でゴジラが氷山に埋もれてしまう結末も本作からの由来だったのでは無いだろうか
大きさはゴジラの半分程度ぐらいか
だからニューヨークに上陸しても建物の破壊も大して無いし、口から放射能を吐かないから大火災にもならない
それでも人々は逃げ惑い、警察や州兵が出動する
武器はせいぜい小火器で血が飛び散りはするが大した効果はない
しかもその血から怪獣と共に蘇ったレトロウイルスの感染で兵士達が倒れだし、大砲など大型火器で攻撃するとウイルスが広範囲に飛び散るので使え無くなってしまう
2020年4月2日現在ニューヨークはコロナウイルスの猛威によりロックダウンされてしまっている
ウイルスの設定は現在の私達にとっては身を乗り出して観てしまう
ともかく怪獣が通常兵器では歯がたたないという設定は本作のこの設定から由来していたのだ
もしかしたらシン・ゴジラの残留放射能の設定は本作のレトロウイルスに由来していたのかも知れない
そして怪獣は結局人間に倒されてしまう
それも核の力で蘇った怪獣は核の力で倒されるという結末だ
ゴジラではオキシジェンデストロイヤーという革新的兵器で倒される
核は核の力で制するのが米国映画の本作であり
核は核以外のもので制したいとするのが日本のゴジラであったといえるかもしれない
この構図はなんとシン・ゴジラまで続いているのだ
ヤシオリ作戦とは、本作の結末のオマージュだったのかも知れない
シン・ゴジラはこうして考えてみると、実に良く本作をリスペクトしていることが見えてくるのだ
ゴジラファン、ガメラファンを自認するなら絶対に観ておかないとならない映画だ
田中友幸にゴジラ製作の着想を与えた映画として怪獣フリークの間では有名な作品。プロット的に似た部分もあるがコンセプトは全く別物と言ってよいだろう。
北極の核実験で氷に埋まり冬眠状態だった恐竜が目覚め、帰巣本能で海流に乗り、船を襲ったり灯台を破壊したりしながら、かっての生息地だったニューヨーク沖に戻ってくるという設定。
実験場で怪獣の起こした雪崩で九死に一生を得た核物理学者トム・ネスピット博士のモンスター目撃談を誰も真に受けずショックでの精神錯乱と決めつけられる、憤懣やるかたない博士は古生物学の権威エルスン教授に助け船を求めますがとりあってもらえません、美人助手のリー・ハンターは氷漬けのマンモスの発見例もあることから興味を持ちます、彼女の助けから怪獣はレドザウルスの亜種と推定されます。レドザウルスは特撮のレイ・ハリーハウゼンの造形でT-REX似ですが尻尾を挙げて歩くのを嫌い引きずる4足歩行としたそうです、低予算から1体を使いまわした駒撮りと実写のフィルム合成です。キングコングフリークならではのお約束でニューヨークで大暴れ(電車を襲うのはゴジラの方だけです)、さすがにバズーカ砲にはまいったようですがあっさり殺られては盛り上がらないので血液が人に免疫のない古代のレトロ・ウィルスに汚染されているこじつけでとどめをさせません。幕引きは原作者のレイ・ブラッドベリが怪獣の骨組みのようだと称したコニーアイランドの遊園地のジェットコースター場、劣化ウラン弾のようなものを撃ち込まれもがきながら息絶えてしまいます。核実験は出てきますがゴジラのような放射能怪獣ではありませんし火器で退治可能、顔は怖いですが躯体は太めの短足で迫力もゴジラの比ではありません。初代ゴジラのアメリカ版では反核思想を嫌ってアメリカ人記者の体験談風に改ざんされたくらいですから反核のようなメッセージ性も無く純粋な怪獣娯楽映画です、秀逸な起承転結、プロットは以降の怪獣映画に多大な影響を与えたことは間違いないでしょう。