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山桜 Comments (11)
藤沢周平の同名短編小説を映画化した本作。
彼の時代小説が好きなので、もちろんこれも観るつもりで^^;
いやしかし~。
予想はしていましたが、それ以上に地味な作品でした。
確かに原作がそう(セリフもほとんど同じ)なんですけどね…。
ヒロイン野江に、時代劇初挑戦となる田中麗奈を起用。
彼女がどれくらい幸薄い武士の妻役を健気に演じられるか、
…だったんですけれど、まずまずだったと思います。
初挑戦らしく初々しい感じ?かな。儚さはあまり無く^^;
それでもって、相手役の手塚弥一郎に東山紀之なんですが、
これがねぇ~カッコ良すぎるんだな。さすがジャニーズ!
っていうか、少年隊!?殺陣も見事に決まっているので、
まぁ申し分はないのですが^^;海坂藩の平侍には見えない~。
第一、当時とはいえ、あのカッコ良さ(贔屓目に見ても)で
ご縁がない。ってのは、おかしな話じゃございませんか!!
まぁ、いいんですが・・・。
題名にもあるように、山桜が綺麗です。
一本だけ、凛と咲き誇る山桜。枝を折って持ち帰ろうと、
野江が手を延ばした先に、手塚が折ってくれたのが出逢い。
もともとは、縁談があり(手塚はずっと野江が好きだった)
…ともすれば結ばれていた二人だったのに、
野江の母親が彼の家庭(母ひとり子ひとり)に気後れし、
二人を逢わせることなく縁談を断ってしまったという。。
彼ら二人を取り囲む、家族(特にそれぞれの母親)が好演、
幸せになるためには、こんな回り道も必要なのかも。。と
誰もが味わう苦しみですら、考え方一つでこんな風に
前向きに生きられるんだよ、という教科書のような作品です。
辛い、苦しい、と嘆く前に、今の自分に何が出来るのかを、
他人のために一つでいいから、なにか報いてみる必要性を、
ただただ静かに語っているだけの、そういう作品でした。
でもラストは、やたら涙が溢れました。やっぱ富司純子だ(T_T)
(村井国夫は適役ですね。篠田三郎は最初分からなかった^^;)
雪解けが進むせせらぎには、春を待ちきれず咲きそろう草花が水面を映え、そよぐ風も温んで心地よさそうです。画面を引くと、冠雪のままの雄大な鳥海山がそびえ、冒頭だけではや観客を藤沢周平の世界へ誘うのでした。
美しいのは風景だけではありません。山桜で描かれる心情そのものが滋味に満ち、心にジ~ンと響き、見ている方のこころも洗われてピュアになっていくような作品でした。
構想7年。『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』『蝉しぐれ』『武士の一分』と続く、藤沢周平作品の映画化最新作です。そして初めて女性が主人公となった映画化となりました。篠原哲雄監督の抑え気味な演出が光り、藤沢作品のなかで最高の仕上がりと思います。藤沢周平の長女遠藤展子氏も、「まるで父の小説を読んでいるような錯覚を覚えた映画です。」と絶賛しています。
原作では、夫の病死で離縁をされ、その後気に入らない再婚話を受けて嫁いだ野江が、つらく切ない環境の生活に思い悩んだ末にやっと本来の男性と新しい人生を歩みだす話になっています。けれども本作には、敢えて最後のオチの部分を切り落とし、本来の男性に思いを寄せるところで終わっています。
このラストも余韻が残る言い終わり方でした。
野江役の田中麗奈さんは、心の強い凛とした女性像を見事に体現しています。彼女なら筋を通して嫁ぎ先に離縁されても、さもありなんと思えました。
昔から野江に好意を寄せていた武士手塚弥一郎は、山桜の下で再会したとき凛々しさ、そして剣術の使い手として殺陣筋の美しさはほれぼれするもので、東山紀之さんの演技にも注目して欲しいと思います。
また真の主役といえる山桜もなかなかでして、写るだけでも感動的でした。そして枝を野江が実家で活けても、それが何か主張しているむように、物語を映えさせました。
特に壇ふみが演じる母が、活けられた山桜の花弁が散る様を見て、嫁ぎ先で苦労する野江の姿を枯れゆく山桜にダブらせて案じる姿が印象的でした。
その後手塚弥一郎は、私腹を肥やし農民を飢餓に追いやる組頭を斬って出頭してしまいました。それがもとで結局2度目も離縁して野江は実家に帰ります。ここから藤沢周平の原作は、野江を藤沢作品を代表する女性像として浮き彫りにしてゆきます。
手塚弥一郎は獄舎に入ったまま、無言。台詞もありません。そこに野江がけなげにお百度を踏む姿が何度も重なります。台詞やト書きは一切ありません。しかし観客は野江の気持ちがスクリーンを通じて痛いほど伝わってきて、泣けてきます。
ふと気がつけば、冬が過ぎ、春が巡ってきました。僅かな牢の窓から山桜が咲いているのを弥一郎は気づきます。同じ頃野江も山桜を見つめていました。ふたりの間をまるで山桜がつないでいるようでした。
折った山桜を手土産に、野江は思い切って手塚弥一郎の家に向かいます。これまでに何度躊躇したことでしょう。家は弥一郎の母親のひとり暮らしでした。「いつかあなたが、こうしてこの家を訪ねてみえるのではないかと、心待ちにしておりました。」との母親のひと言に、野江は眼から涙があふれ落ちます。ここも泣けましたね。
台詞はないものの、なんて自分はとり返しのつかない回り道をしたことだろう!なぜもっと早く気づかなかったのだろうと。嫁ぐべき家の母を前にして後悔の思いに打ちひしがれる情が、はっきりと伝わってきました。
人生回り道も無駄ではありません。その涙は、後悔ばかりでなく野江の希望が叶うことを暗示しているように見えてしまうのは小地蔵の穿った見方でしょうか。
派手なアクションや、CGを使った幻想的なシーン、それに熱いラブシーンすらない、淡々とした作品です。藤沢作品の持つ、美しい風景描写と心情、そして独特の間を完璧に表現した作品としてお勧めします。こんな作品が現代でも生まれるのも、やはり日本映画が残してきた遺産が息づいてているからだと思います。
ラストをあやふやにする事が観客に対する優しさだと感じました。
全くヒントも与えられないラストに驚愕しましたが、ヒントがある程、私たちの想像の幅は狭まってしまいます。
時代劇に詳しくないのが幸いして、二人の幸せな未来を思い描くことが出来ると思いました。
派手さはないですが、登場人物の心情や時代背景が大変丁寧かつ恋愛物の時代劇ということもあり、新鮮な気持ちで鑑賞出来ました。
主役二人の凛とした様がとても素敵でした。そんなふたりが儚くて、心が切なく淡くなりました。
どんな結末を想像しましたか?
私は一般常識も取り入れつつ希望を込めて…
殿が弥一郎の家に野江が暮らしている事を知り、一日だけ帰宅を許す。野江は弥一郎との子供を産み、弥一郎の母と仲良く三人で暮らす…かなと。
超現実的パターンや超理想パターンなど、想像が止まらず楽しかったです。
■印象的な事及びシーン
・手塚が野江と墓参帰りの際に山桜の前で会うシーンの美しさ。
ー”今はお幸せでござるか・・”と声を掛けながら、山桜の枝を手折り野江に渡す手塚。この後、二人の過去の関係性と現在の野江の辛い日々が描かれる・・。-
・海坂藩の下級武士の娘・野江を演じる田中麗奈の質素だが、美しき着物姿。そして、彼女の両親が二度も出戻った娘を、責めない姿。
ー 母(団ふみ)の言葉 ”貴女は、ほんの少し回り道をしているだけなのです・・”ー
・同じく、海坂藩の下級武士で剣術に秀で、藩校の道場で剣を教える手塚弥一郎を演じる東山紀之の凛とした侍の姿。
ー この方は、大岡越前のイメージが強いが、今作のような役も実に良く合う。-
・凶作が続く海坂藩の重臣、諏訪は財政の為と言いつつ、私腹を肥やし別邸などを立てている・・。手塚が諏訪の一行と会った際、頭を下げつつ道を譲りながらも諏訪を見る目の厳しき事。
一方、諏訪に媚び諂う野江の再婚した夫、磯村を含めた連中の姿との対比。
野江の夫に対する激しき目付き・・。そして、自ら離縁して実家に戻る姿。
・手塚は、且つて握り飯を田で渡した少女とその母の粗末な墓の前で手を合わせる男の姿を見て、重大な決意をする・・。
ー多くの人が、見て見ぬふりをしているのに・・、そして諏訪の行状を江戸にいる藩主に知らせようとした者の事を耳にしているのに・・。自分の命を犠牲にしてでも・・。-
ー 野江の父(篠田三郎)の言葉 ”あの事件はお家を動かした・・”ー
・手塚は自らの意思で投獄され、冬が来て、又春が来る。獄中の小さな窓から見上げると、そこには蕾が開きかけた桜が・・。
野江は手塚の母(富司純子)の家を勇気を持って”山桜の枝”を携え、訪れる。そして野江の訪問を喜ぶ手塚の母と、粽を作りながら”新たな生活”が始まることを祈る・・。
<藤沢周平の世界に触れた人であれば、海坂藩のモデルは庄内藩であり、藩主の酒井家は代々、名君であった事は承知の筈。(手塚が切腹にならない理由の背景であろう・・)
又、随所で映し出される月山の雄大な姿や、庄内平野の美しい風景も印象的な、品性高き時代劇映画の佳品である。>
庄内地方と思われる山野の四季折々の美しさ、題名にある立派な山桜。日本の原風景をぜひ訪ねたい気持ちにさせる。
そんな土地を背景に、嫁ぎ先になじめず苦悩する主人公と、苦しむ農民たち。弥一郎という男の志が、主人公や農民たちに勇気と希望を。山桜の美しさと重なって清々しく爽やかに終わる。
田中麗奈は芯の強く自立しようとする主人公に似合っていた。夫に戒められる厳しい視線と信頼できる家族や用人たちとの優しい眼差しを見事に使い分けている。時代劇、和服の仕草や歩き方、彼女の役柄にさらに幅ができた印象を受けた。ここで、富司純子か、というのも良かったな。