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恋の手ほどき(1958) Comments (2)
ベルエポックのパリ
地位(経済力)のある男性は 結婚してもなお、旬の恋を求める(イイトコドリ)
恋のお相手は 2つに分かれる
恋の終わりを心配する者
その運命に 果敢に挑戦する者
その気風に合わない ジジの一家は 前者で、アリシア叔母さんと リアンは後者か…
彼等は 華麗に生きようとする(美女が多い) 剛の者である
更に考えれば 叔母さんは「頭脳的戦略家」であり、リアンは「本能的戦略家」だろうか…
そんな叔母さんが、ジジに作法(+男心の掴み方)の指南をする処が 可笑しい
又、艶やかなリアンを演じる エヴァは、ザザ・ガボールの妹である
恋の熟練者 ガストンの叔父に シュヴァリエが扮し、叩き上げから 大スターに登りつめた存在感(魅力)をみせる
ガストンの ルイ・ジュールダンも 顔よし歌よし演技力ありで、実力発揮
ジジが 習った作法を披露するのを見て、胸を痛める(痛々しい… )
そして チェックの洋服で暴れまくる(?)ジジの
レスリー・キャロンが可愛い
ダンサーなので 動作も綺麗
娘から女性に変わる瞬間は 独身男ガストンの心を掴み、
(あの社会への反抗的な精神も、潰したくない)
ジジの全面的勝利で終わる
年を取ったせいか、ジジの周囲の大人達の思惑も理解出来、面白かった
パリを舞台にした アメリカミュージカルだが、
違和感はあまり感じなかった
ミネリ監督、大成功
当時の建築や美術は、アール・ヌーヴォーを代表とする、豪奢な曲線美を持つ装飾が良しとされた。とにかく豪華であればあるほど良かったのである。本作でもアール・ヌーヴォーの影響が室内をはじめ、至る所にみてとれる。
だが、同時にこの当時から、新たな建築様式によって近代化が図られていくのである。コルビジュエや、F.L.ライト、ミース・ファン・デル・ローエなどの革新的な建築家によって、建築はその装飾がとられ、シンプルになってゆく。ミースの言葉"Less is More"は有名だろう。
私は、これらの近代化の波が、ガストンの姿と重なって思えるのである。ガストンは、大衆の女性や文化を「Boring」と何度も貶している。そして、自分のありのままの姿を晒し、伸び伸びと生きる変わり者のジジに惹かれていく。ガストンは、ジジが大衆の作法を無理やり習得させられていることに怒りを露わにする。
ジジはパリでは何もかもが恋だと冒頭で言う。その通りなのだ。全ての行動は恋愛のため。恋の手ほどきとして、ジジは作法を学ばされていたのだ。
しかし、本当の恋の手ほどきとは「大衆に迎合せず、ありのままの自分であれ。」というアイデンティティを問うアドバイスだったのだ。革新的なアイデアはいつもマイノリティである。その素晴らしさは後になって気がつくもので、大抵は多くの人の批判を受ける。ガストン、ジジ、2人ともお互い自分らしさと周囲の批判との間で葛藤を抱え、苦悩する様子が、ミュージカルのサウンドに乗せて届けられる。そういう意味でもやはりこの邦題の素晴らしさが理解できるだろう。
そしてラストの、ジジの決意の言葉「みじめでもあなたと一緒にいたい。」これが答えだ。
20世紀初頭、文化とともに、恋愛も近代化の手ほどきを受けたのだ。