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クィーン Comments (20)
冷静に映画そのものを楽しめない事もあり、今日まで映画を見逃して来た。
私と同じような気持ちでこの映画を見ていないファンの方も多分多くいらっしゃると思う。偉人伝は、ドキュメンタリー映画の事もあれば、役者の演じるドラマとしてフィクションの場合もあるが、ドキュメントで事実の羅列以外は総て、ドキュメンタリー映画と呼ぶが、それでも真実からは程遠いのだ。作者の意図を反映し、その描かれる人物その者を理解出来る作品では決して無いのだ。
この作品を見ていると、人は個人で存在するプライベイトの顔と、公に存在する顔の二面性を持って生活しなくてはならない、現代社会の人間の複雑な社会性が良く覗われる。
一般人の私達は、あまり公の立場の顔とプライベイトと言う違いは無いが、それでも仕事の顔と、家庭の顔の2種類の顔を使い分け、不本意ながら、2つの世界で生きる事の矛盾を突いてくる。そして本心とは違う自分の公の顔を演じると言う意味では、王室ともなれば、全くのプライバシーも無く、権力の総て、望むものこの世の総てを手中に出来そうに思うが、逆に全く総てを持ちながら、その総てを自由に出来ない、一人の人間としての苦悩が、胸に深い迫り来る作品だった。エリザベス女王が、「選挙権」を持って見たいと呟くシーンが総てを明らかにしてくれている気がした。
そして、エリザベス女王自身も自分の創り上げた王室のイメージと創り上げられた庶民の王室に対するイメージの狭間で出口を模索すると言うこの作品も、一人の人間か、その人間が作り出した虚像を生きるのが先か、と言う人生の選択の連続で悩む一人の女性の姿が愛おしく想える。
女性なら誰でも憧れる、白馬に乗った王子様が、迎えに来て結婚する事こそが、女性の幸せと夢見る人もまだまだ多いが、実際に、そのシンデレラ物語を生きたダイアナは良いにつけ、悪いにつけ常にマスコミの餌食となり、結婚に破れて離婚をするという天国と地獄に生きた女性であり、別の視点では、権威と伝統と言う保守の世界で生きるエリザベス女王と、民間からロイヤルファミリーへと仲間入りをし、新しい時代に生きようと試みた一人の女性との生き方の相違、或いは身近に考えれば、嫁姑と言うジェネレーションギャップ+家族ならではの愛憎問題と言う側面を映し出す作品としても必見の価値がある。
一つ物事に対しても、10人十色の生き方と、考えがある。その人間の多様性と自由と言う点について、考えて見るのもとても面白い。
補足だが、ダイアナ妃の死後1週間後、ダイアナの生き方に最も多大な影響を与えたエリザベス女王以外のもう一人の女性として有名な・マザーテレサその人が亡くなった。
世界で有名な、世界中から愛されている2人の女性が1週間で2人も亡くなると言う不思議な運命の1週間であった。
正しいことなんてわからないけど、しきたりに囚われていることと、しきたりを守ることが混同されてる、少し悲しい人生の話に感じた
途中から涙が止まらなくなってしまいました。
ダイアナ妃の交通事故死への
エリザベス女王の苦悩、ブレア首相の憂慮、
よくここまで掘り下げて、一つの人間ドラマとして
描きあげたものだと、驚愕し心を揺さぶられました。
日本で、ここまで皇室に踏み込んで
作品を作るのは不可能でしょう
(例えば雅子妃の苦しみを題材にする等)。
鹿を見てエリザベス女王が涙を浮かべるシーン、
側近に「なにも解っていない」と声を荒げて
女王を擁護するシーンが特に感動ものでした。
エリザベス女王も表情演技が素晴らしかったですが、
人間味溢れるトニー・ブレア首相扮するマイケル・シーンの
演技も、ヘレン・ミレンに負けず劣らず素晴らしかった。
陰陽ではないですが、
この両者がいなければ成り立たない作品に思えました。
現役の女王の内幕を描いたという恐ろしいチャレンジが、これほど成功を収めたのは、もちろん脚本も演出も演技も素晴らしいことはもとより、英国王室が「時代の流れ」をしっかり受け止めている証拠ではないだろうか?英国貴族へ強い憧れを持っている私としては、まず、英国王室の「日常」が見られるのが嬉しい。王室といっても普通の「家族」。家族だけで過ごす日常は、我々と何ら変わりない。意外と質素な暮らしぶりにも興味を覚えた(女王の着古してケバだったガウンが愛らしい)。自分でジープを運転する(しかもクルマに詳しい)など、女王のアクティブな一面が見られたのも楽しい。次には絶賛されているミレンの演技力。威厳ある中で、時折見せる弱さ。無表情の雄弁さ。引き結んだ唇に閉ざされた感情。「女王」という「職業」を生涯続ける責任感。その冷静な情熱をミレンは見事に演じきった。
さて、本作で私が一番感じたことは「時代の変化」、あるいは「マスコミの影響」。日本の政治家やお役所にも言えることなのだが、閉鎖的な組織の中にいると、外部の状況が分からないことが多い。そのため、従来の「常識」が大きく変化していることに気付かず、問題が起きたときの対処を間違ってしまい、よけいに大きな問題にしてしまう。今回イギリス王室に起こったのはまさにこんな状況だ。女王は、「しきたり」と「イギリス国民の良識」を信じ、自分(王室側)が正しい判断をしていると思っていた。しかしマスコミの先導もあって、国民のダイアナ元妃に対する想いとの間に大きな温度差ができてしまったことに戸惑う。この女王の素晴らしいところは、「聴く耳」を持っていること。皇太后やエディンバラ公が、従来通りのしきたりを頑なに重んじているのと違い、革新派で若い世代(?)を代表するブレア首相(余談だが、本作でのブレア首相が、あまりにカッコよく描かれ過ぎていてくすぐったい・・・笑)の意見を、吟味し検討し、決断を下す。そしてその決断が最終的に正しいものになるあたりが、若くして「女王」になった彼女が身につけた「知恵」なのだろう。「1つの出来事」には様々な見方がある。他方をたてると他方がたたない。国民全てに責任を負うということは、計り知れない忍耐と自己犠牲が必要となる。時代の変化(例えその変化は、マスコミによって意図的に作られたものであろうと・・・)をいち早く見抜き、それに対応できることこそが、「愛され尊敬される女王」の形。だからこそ、このような映画が製作されるのだ。そして、「愛され尊敬される女王」の姿をイギリスだけではなく、全世界の人々に知らしめることとなるのである。