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永遠の僕たち Comments (20)
この作品の魅力の一つは何と言っても、青春のキラキラと輝く初々しさと、直ぐにでも壊れてしまいそうな繊細さ、純情さを描かせたら右に出るものはいないと私は信じて止まないインディペンデント映画界の大御所監督ガス・バン・サントの作品で有る事だ。
まぁ何時までも、インディペンデント映画界の映画監督と言っては大変にガス・バン・サント監督に対して失礼であり申し訳ない事であるが、しかしこれはバカにして言っているのでは無く、真逆で、彼に対して尊敬の気持ちを込めて敢えてそう表現しているのだ。
アカデミー監督賞候補には2回も選ばれているが、残念だが彼自身監督賞の受賞は出来てない。けれども、「グッドウィルハンティング」ではマット・デイモン、ベン・アフレックが脚本賞を受賞し、ロビン・ウィリアムスが助演賞を受賞し、「ミルク」でもショーンが主演男優賞を受賞した。この様に素晴らしい感動作品を監督し、映画史にも残る立派な作品を監督している彼なのだが、しかしその割には、彼はいわゆるハリウッド大作映画を制作しないで、小品ばかりを撮り続けているそんな彼の独自の姿勢が私はとても大好きで、しかも彼の作品は本当に心がキュ~ンとなるような、そして何か普段は忘れ去っている遠い昔の純粋だった頃の自分達の過去の気持ちを、目の前に一瞬にして届けてくれる力を持っている作品を撮ってくれるところが好きなのだ。
何時の間にか、何処からともなく春風に乗せた様に、心が軽く踊り出す様な心地良い暖かさを観る人の心に届けてくれるのだ。
映画を観る私達の心の中に、優しさの大切さ、自分自身を、そして人々を信じて生きる事の価値を再確認させてくれて、幸せな気持ちを運んでくれるのだ。
本作品も不治の病の少女アナベルと両親を突然の交通事故で亡くして以来死に取り付かれてしまったナイーブな青年イーノックとの淡い恋を、ヒロシと言うジャパニーズ神風の英霊を交えて、彼ら3人の織り成す不思議なファンタジーの世界を魅せてくれるのだ。
この薄幸の少女アナベルを演じているミア・ワシコウスカがとってもチャーミングであり、彼女の伸びやかで自然な芝居が良いのだが、彼女は「アルバート氏の人生」でも堂々、グレン・クローズを相手に良い芝居を披露していて大変印象深かった。
そして、彼女の恋人のイーノックを演じたヘンリー・ホッパーも好青年でこの繊細なイーノックの役を懸命に演じていて、この若い2人の俳優の魅力を良い感じで引き出したのは、流石この監督ならではの実力だと思う。
そしてイーノックは交通事故で臨死体験を経験してから、彼には旧日本軍兵士の英霊である特攻のヒロシが見えるようになる。その特攻隊員のヒロシが彼の経験から、恋の手解きをこのイーノックとアナベルに指南するのだ。このヒロシを演じる加瀬亮が軽妙なテンポでこの2人の恋人のキューピット役を好演しているのも面白い設定だ。ピュアで切ない恋の別離の物語だが、最後に出会い掴んだイーノックとの幸せで、アナベルは天国へ行けるのだ。如何に生き愛したかが、人の人生の価値を決める事を改めて思い出す作品だ。
両親を亡くした少年と余命いくばくもない少女の出会いと触れ合いを描く。学校にも行かず他人の葬式に勝手に潜り込むことを繰り返す少年は何に囚われていたのだろうか。だけどもうすぐ死んでしまう少女は、怯えも悲しみも痛みも見せずに、全て悟ったように清清しく生きていく。まだ大人になる前の美形の少年少女が、その若さと美貌ゆえに儚さと脆さを含んでいて、今にも壊れてしまいそうな雰囲気の中で生と死に挟まれている様子を静かに捉えていた。
『グッドウィルハンティング』のガス・バン・サント監督が、そのような2人の心の動きを繊細に描いた。彼には派手な活劇や迫力の映像はないが、このような傷ついた粉々の心の揺れ動く描写が上手い。
ヘンリー・ホッパーとミア・ワシコウスカが素敵な雰囲気を醸し出しているのがその理由だと思います。痛烈で無いと書きましたがそれにも関わらず深く考えさせられる作品に仕上げてあって感動しました。また加瀬亮が出てくるタイミングが最高でエンディングの場面ではそうだよねと涙を誘う演出でした。
刺激的な作品が好きな方はあまり好きではないかもしれません。