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余命 Comments (8)
映画「余命」(生野慈朗監督)から。
結婚10年目、諦めかけていた夫婦に、
妊娠という明るいニュースが届いたのもつかの間、
妻の乳がんが再発して、またまた辛い日々が・・。
そんな場面にもかかわらず、私の疑問は、
お腹の子にがん細胞が転移することはないのか、
ストーリーとは関係ないことに興味を抱いてしまった。
ところが、妻の役柄が医者ということもあり、
あっさり、物語の中で答えを導きだしてくれたのが、
「がん細胞は、胎盤に守られて攻撃できない」のフレーズ。
えっ、本当?と私自身の耳を疑ったが、
それにもまして、人間を作った「神」の偉大さに驚いた。
母親が癌でも、胎盤に守られた子どもは子宮の中ですくすく育つ。
これは「人間誕生の神秘」としか表現が出来ない。
「余命」というタイトルを「与命」という漢字に変換したい。
そんなことを考えた作品であった。
近づく男の胸元を女は力一杯 叩く。叩く。叩く!
そして抱きつく。
「頑張ったね。怖かったろう」 男の言葉に女は応える。
「怖かった、もう帰って来ないのかと思った。」
半年前、女は子供を産む決意をした。
だがそれは自分の身を犠牲にする覚悟でもあった。
彼女の体には乳癌が再発していたのだ。
治療すればもう子供を産むチャンスはなくなる。
自分の身体と引き換えに故郷の奄美の夕陽のもとで
彼女は子供を産む覚悟を決めたのだった。
映画の出来栄えは
最初は低空飛行、どうなることやら、心配してしまった。
後になってその理由の一端がわかった。
松雪さんの演技が固いのだ。
女流作家、谷村志穂の描く主人公の滴(しずく) になろうとするあまり、
観客を置いてきぽりにして、
自分だけなりきってしまっていたのだ、と思う。
夫役の椎名桔平がマツユキさんに囁くように
「いままでにキス何回くらいしただろう」なんてキザな言葉を
囁いているシーンが何度かあったが、
こんな言葉をさらっと言える男はどれ程いることだろうか、
なんて事を考えながら観ていた。