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早春(1956) Comments (11)
妻(淡島千景)は子供を亡くして以降冷え切っている夫婦関係にはあきらめ気味。
夫の浮気に気が付いた妻は家出、夫は地方への転勤を受け入れる。
この作品も戦争の影がある。
では何故タイトルが早春なのでしょうか?
それは杉山夫妻にとって人生はまだ早春に過ぎないからなのです
小野寺さんが示唆する様に、まだ瀬田川でボートを漕いでいる人生の学生にすぎないのです
人生の様々な先輩や同僚達が登場します
サラリーマン生活は山あり谷あり、上司により、派閥により、健康により、順調に出世の階段を昇る者もいれば、儚く若死にする者もいる
女性にしくじる者だっている
夫婦生活も同じように波風もたてばすれ違いもある
それでもあっという間に月日は過ぎていくのです
気がつけば会社の先輩が脱サラで開いたバーに飲みに来ていた定年間近の男性のように暮れゆく秋を迎えているのです
その時、あなたは人生の早春をどのように思い返すのでしょうか?
瀬田大橋を快速でくぐり抜けていく漕艇
漕艇はオールを呼吸を合わせて漕がねばいけません、夫婦も同じだというメッセージなのです
だから小野寺さんの任地は滋賀支店に設定されているのです
蒲田と丸の内
アジア的なごみごみとした日本の家屋と都心の近代的なオフィスビル
岡山県三石と東京
山に囲まれた何もない町と猥雑で繁華な都会
その二つの対比を際立て描写しています
人生のオンとオフ、公と私、山と谷
それらをこの二つが象徴しています
そして、その両者を鉄道が結びます
鉄道は両者を毎日行ったり来たりするのです
さすが黒沢明と並ぶ世界に名声が轟く名監督小津安二郎作品
その中でも最高峰の傑作に挙げらるだけあります
何もかもが見事です
パーフェクトとはこの事でしょう
金魚役の岸惠子の美貌には目を奪われました
なんという美人
時代を超越してあり得ない程の美人です
彼女の序盤のシーンではブラウスの背中にうっすらとブラジャーが透けています
畳から立ち上がるときにスカートが翻り、チラリと足が一瞬覗きます
セックスアピールの演出の的確さは舌を巻きます
小津安二郎監督作品はとても日本的でドメスティックな内容のように感じます
しかし本作を観ているとイタリア映画のネオリアリズモにも似た味わいを感じます
普通の人々の生活への視線にはヴィットリオ・デ・シーカ監督にも負けない国際的な普遍性があると思います
本作もまた世界に誇る日本映画、いや世界の映画史に残る至宝でしょう
夫婦の有り様よりもサラリーマンの物悲しさ、やるせなさが印象に残った。同じような毎日の繰り返しの中、岸恵子のように美しくハツラツとしたOLが相手なら不倫も仕方ないように思えてきてしまった。結局最後に妻は転勤先の夫の元に赴き、めでたしめでたしのようだが心の溝はそのままなのが表情にみてとれ、中年の寂しさが余韻に残った映画だった。
映画「早春(1956)」(小津安二郎監督)から。
私の感性が低いのか、監督はこの作品を通じて、
私たちに何を伝えたかったんだろう、と考えこんでしまった。
当時の様子がわかる映像が散りばめられていて、
60年近くたった今見ると、楽しいシーンも多いが。
他の作品もそうだけど、時々、英語がぽっと台詞に含まれる。
そんな覚えたばかりのような英語を使うあたりが、
戦後間もない作品だなって感じて、メモをしてみた。
(違和感と言ったら失礼になるだろうけれど・・)
特に、働いている若者同士が一斉に手拍子で
「ツーツー・レロレロ・ツーレーロ・・」と歌いだしたり、
狭い部屋で1つの鍋を囲んで激論したり、楽しそうだ。
そんなワンシーンで使われた英語。(笑)
「つまり反省だな、セルフ・エキザミネーションだ」
「人道上な、ヒューマニズムだよ」とやたらと英単語が並ぶ。
女性の洗面所で「シャボン、もういい?」と言われた時は、
「石鹸」のこととは気づかず、メモしそこなった。
何かを意識して、英単語を使っていると思うのだが、
その意図がわからず、不完全燃焼で観終わった。(汗)